あの頃 あたしは
誰かを上手に愛する事も出来ないのに
誰かに愛されたくて仕方なかった
あんたそーとー恨まれてるし
よけいな事しないで
そっとしといた方がいーよ
いや 言いわけとかじゃなくて!
ただ…
せめて ちゃんと謝んなきゃと思って
おまえが奈々に謝りたいと思うのは優しさじゃねぇ
単に 謝って自分がスッキリしたいだけだろ
いらないよ
彼氏なんか
もう 恋なんかしない
ナナがいれば寂しくない
しかも女同士だから変な気も使わなくて済むし
妙なヤキモチとかもやかなくて済むし
安心してずっと一緒にいられるもん
それに比べて恋は
疲れるし
傷つくし
消耗品だよ
もう うんざりだ
あたしが欲しいのは彼氏じゃなくて
あたしを守ってくれるナイトなの
だけど現実にはそんな男
いない事くらいもう分かってる
ねえ 知ってる?
次のバンドさ!
めちゃめちゃかっこいーんだよ!
知ってますー!
超かっこいーですよね ブラスト!
特にボーカルのナナさんが!
女の子とは思えないほどパワフルで!
両足で踏んばって
立っているのが精一杯で
独り 置いてきぼりになる
ナナはそんな歌ばかり歌ってた
涙が出そうだ
それは あたしの気持ちだよ
遠くに行かないで ナナ
取らないでよ…
みんなして
あたしの居場所を取り上げないで
また この子
ここに泊めるつもりなの?
ここはあたしの家でもあるんだから
勝手な事ばっかしないでよ ナナ!
その時
てっきりナナは怒り出すかと思ったのに
叱られた子供のような顔をした
思い返す度
胸が痛む
あの頃 あたしが もう少し大人で
ナナの弱さにきづいてあげていたら
今とは違う未来があったの?
言葉は使い方を誤ると凶器になる。
しかも一度放ってしまった言葉は取り消しも言い直しもきかない。
人を傷つけるなんて簡単にできる。
人を温めることができるのもまた、言葉なのに。