タクミと言葉を交わすのも忘れて
ひたすらキスしながらベッドに倒れ込んだ時
ナナが表へ出て行く気配を感じた
あたしは思考回路の遮断された頭で
レンに会いに行くんだろうとぼんやり思った
欲しいなら奪っちゃいなよ
だから おれはお前の言うように!
何も求めずにただ優しく見守るとか
そーゆーのが本物の愛だって…
思っちゃいるんだけど…
やっぱダメだ…
あの男だけは許せねぇ
充分 愛を感じるよ
ノブさん
こんな時間に
こんな家の近所で
なんで一人でお茶なんか…
やっぱりなんかあったんだろ
奈々ちゃんとケンカでもしたか
タクミが家に来てるんだ
邪魔しちゃ悪いと思ってさ
あたしはタクミのファンである前にトラネスのファンですから
しっかり働いていっぱい新曲出してくれないと困ります
ほんとかわいいね おまえ
奈々…
誰にも渡したくない
ずっとおれのものでいてよ
なんで あたしの大事なもんは
みんなトラネスに取られちゃうのかな
でもレンもハチ公も
べつに元々あたしの所有物なわけじゃないし
そんな考え方
おかしいのは分かってんだけど
どんなに一緒にいても
みんなそれぞれに生きてて…
誰かを自分のものにするなんて
絶対無理なのは分かってんだけど
時々どうしようもなくその事が…
寂しく思える時があって…
おまえとレンはほんと似た者同士だよな
レンが上京する前
さっきのおまえと同じような事 言ってたのを思い出したよ
人は結局みんな独りで
どんなに寄り添ってもひとつにはなれなくて
誰かを自分のものにするなんて
絶対無理だって
絶対無理なのは分かってんだけど
でも時々さ
ナナがおれのもんだったらいいのにって
どーしようもなく思う時があって
そしたら皮ジャンのポケットにでも入れて東京まで連れてくのに
それより一言
言やいいのに
「おれについて来い」
かっこいいね それ
言ってみるか!
そーしろ
いい眺めだろ
一緒に住む?
考えとくよ
いつかぜってー越えてやる!
何を?
タクミ
ねえ ナナ
あれだけいつも一緒にいたのに
少しもナナの事
分かってなんかいなかった
傷つけている事にさえ
気づかなかった
あたしを許して
レンとナナの言っていたことを考えると本当に切なくなる…
でも相手を自分の所有物にできないから、寄り添うんじゃないのかな。
一緒にいることで相手を感じることができるし、相手にも自分を感じてもらうことができる。
言葉は好きなように塗り替えられるけど、ぬくもりは変わらないものだから。