16の夏
煙草をセブンスターに変えた
レンが吸っていたからだった
同じ数だけピアスの数を増やし
お揃いのブーツで歩いて
同じベッドで眠り
同じ夢を見ていた
なのにレンはあたしを置き去りにした
あたしは心のどこかで
それを許せていなかったのかもしれない
母を許せなかったのと同じ様に
結婚する事にしたから
おれ達
何あれ
まるでタクミの忠犬じゃん
おまえは
何の心配もせずに
おれの機嫌だけ取ってりゃいーから
なんで使わないの?
いちごのグラス
気に入ってんだろ?
だって それ2個しかないし
もし 割れちゃったら…
使わなきゃ意味ねえじゃん
そーだけど
お揃いが割れたら悲しいもん
使ってもいいけど 絶対大切にしてね
よかった
きれいに重なった
もう悲しくない
愛が なくていーの!?
愛なんて後付けだって
人間なんてしょせん みんな自分が一番可愛いんだから
己の欲望をより多く満たしてくれる相手を愛してしまうものだ
お願いが…
あるの…
いいから
何でも言って
何でもするよ
お金は…
もういらないから…
ヤスの携帯の番号教えて…
ナナ!
何やってんだよ もー
おまえは!
心配するだろ!
ノブ夫…
あたし…
やっぱり どっかおかしいかも…
自分が なんでここにいるか思い出せないよ
寝ぼけてるだけかな…
いちごのグラスが
床に転がり落ちそうになった事までは覚えてる
あれは初めて2人で買ったおそろいのグラスだったのに
あたしは あのグラスをちゃんと受け止められたのかな
あのさ ハチ
あんたの全てを受け止めるには
あたしの器は小さくて
安物のガラスみたいだった
だけど全てを失う寂しさに比べたら
ひび割れて行く痛みの方がマシだったんだ
あたしが脆かっただけ
あんたのせいじゃないよ
ハチ子は大事なときにいつも逃げる。
章司のときもそうだったけど、今回もまたノブからもナナからも逃げた。
まぁ、逃げたのはナナも一緒だけど…
ハチ子はハチ子なりに、本当はいろんなことを考えているのに、いつも言葉にすることを避ける。
いろいろ考えていたって相手に伝わらないと意味ないのに…