Monologue of NANA

いちごのグラスは
100円ショップにまだ普通に売られていた

なのにスペアを買い足さずに
大切にしていたハチの気持ちを思うと

覚えのない左頬の傷が酷く痛んだ


YASU

なるべく早く帰るから
それまで一人でいられるか
鍵かけて行くから
誰か来ても出るなよ


LAYLA

ごめんねヤス…
いきなり電話して…

他に…
頼れる人が思いつかなくて…

あたし…
レコーディング逃げて来ちゃって…

タクミが…
結婚するって言い出して…
とても歌う気になれなくて…

でも どこへ行けばいいか分からないの…
どこに行っても みんなに見張られてる気がして…
怖いよ…

レコーディング…
逃げ出したなんて知られたら…
きっとみんなに呆れられる…
スタッフにも… ファンにも…
レイラは もう駄目だって見放される…
でも 歌えないよ… どうしよう…
あたしは歌っていないと価値がないのに…


REN

そんなに仕事が大事なら
レコーディング前に歌姫を動揺させるような事言うなよ
プロ根性 試すには鬼コーチすぎるぞ


TAKUMI

何の事だか


REN

すっとぼけるなよ
レイラはおまえにホレてんだよ


TAKUMI

サクっと言うな!
長年すっとぼけて来た おれの努力が水の泡だ!


REN

気づかねぇフリしてる事態じゃねえぞ
おまえが結婚なんかしたら
レイラは歌えなくなるんじゃねえか?


TAKUMI

おれの結婚ごときで歌えなくなるようじゃ困るんだよ…
おれはあいつに恋愛感情は持てねぇんだ
しょーがねえだろ…


REN

まあ確かに それはしょーがねえけど
レイラが歌わなきゃ トラネスは終わりだぞ


TAKUMI

おかしな話だよな
なんで城がデカくなる程
窮屈になるんだ

いつの間にか可愛い妹を高い塔のてっぺんに閉じ込めちまったよ
愛してもやれねえのに

おれの人生
最大の罪だ

でも あいつは歌うしか能がねえ世間知らずだし
おれだって今更引き返せねえし
せめて塔をよじ登ってでも抱きしめてくれる王子様がいりゃいーんだけどね


TAKUMI

悪いな
忙しいのに 迷惑かけて


YASU

これでまた
おれはレイラに憎まれるよ

でも歌ってなければ価値がないなんて
あんなセリフが聞きたくて
あいつと別れたわけじゃねえ

いいかげん なんとかしてやれ


TAKUMI

そう思うなら
おまえが なんとかしてやれよ

憎まれ役はおれの専売特許だ


LAYLA

タクミは…
あたしを見放したんだよ…
仕事投げ出すようなボーカルはいらないんだよ

お願い!
あたしから歌う場所まで奪わないで!
あたしには歌しかないんだから…


NOBU

あいつにとっておれって…
そんなに頼りない存在だったのかな…


NANA

あんたは…
頼りなくなんかないよ ノブ…
女にふられたくらいでいじけるなよ…


REN

どこまで 追い詰めれば気が済むんだ


TAKUMI

何の事だか


REN

せめて後ろでギター弾かせてよ
抱きしめてやるわけにゃいかねえしな


Monologue of NANA

あのさ ハチ

あたしがトラネスに敵対心を持っていたのは
女としてよりボーカリストとして
レンの心を奪うレイラがうらやましかったからで
レンを見返したかっただけで
別に敵に回したかったわけじゃない

だけど あんたを奪われた あの日から
打ち負かさずにはいられなくなったんだ

どうしても
奪い返したかった


Tweets

「歌っていないと価値がない」
そんな風に思わせてしまったタクミの罪は重い。
でもそのことはタクミが一番よく分かってる。
幼なじみって近いようで、本当はすごく遠い存在なのかもしれない。
タクミにとってレイラが大切な存在であることは明白なのに、
レイラの欲しい愛情とは種類が違う。
常に一緒にいるのは子供の頃から変わってないのにね。