当時 あたしの部屋にはテレビも電話もなかった
おかげで一人
祭りに乗り遅れた
不愉快 極まりない
奈々
どこ行く気だ
家に帰ってナナの様子を見て来る
心配だから
頼むからよけー事すんなって
よけーな事じゃないもん!
タクミやっぱり人としておかしいよ!
そー思うんなら
無理に結婚すんのなんか やめたら?
父親がおかしいんじゃガキもろくな人間に育たねえぞ
おれがいい例だ
親がいりゃいいってもんじゃねえよ
一人が心細いなら
実家にでも帰って育てりゃいーじゃん
心配しなくても養育費なら出すって
どっちみちこの騒ぎじゃ
おれは当分ここには来れねえから
好きにしろよ
もしもし 奈々!?
あんたタクミってまさかトラネスのタクミなの!?
違うよ…
そんなわけないじゃん…
うそ!
正直に言いな!
そー考えたら全部のつじつまが合うんだから!
淳ちゃん あたし…
べつに子供の為に無理に結婚するわけじゃないんだよ…
あたし ほんとは…
タクミの事 好きなの…
分かってるって…
良かったよ 自覚してくれて
ノブさん…
なんか変だよ この番組
レンのスキャンダルを利用して
僕らのプロモーションしてるみたいだ
悪ィけどおれ
川野さんの事 信用出来ねえよ!
調子いい事言っといて 嘘ばっかだし!
なんかもう…
おれ 誰の事も信じられなくなりそうだ…
ナナは自分でネタ売ったんじゃないの?
トラネスの人気に便乗した売名行為だ!
あんたらさ
人の庭 荒らす暇あったら
てめえの花を咲かせろや
ばかやろう!
何かっこつけてんだよ!
てめぇの立場 考えろハゲ!
いーんだよ
これで心置きなくバクチが打てるぞ
バカだ こいつ
うちのメンバーはバカばっかりかよ
ノブは親に勘当されても
女に捨てられても懲りずにギターにしがみついてるし
シンはこのままほっといたら破滅の道まっしぐらだし
あたしが歌わなきゃ
未来がないじゃない
あの 本城さん
彼女の事 フォローしなくてほんとにいーんですか?
マスコミに反撃に出たいなら おれは止めませんよ
バンドってのはさ
言ってみりゃ
運命共同体だ
おれが今
守らなきゃならねえのは
昔 捨てて来た仲間じゃねえんだよ
ばかばかしい
わざわざ何か言わなくても
レンはあたしの事よく分かってるし
あたしもレンの立場は分かってる
騒ぎ立てるまい
だけど今 どうしても
口に出さなければ伝わらない想いがあったのに
ぶち壊されてたまるか!
ハチ公 見てなよ
あんたの望みは絶対叶えてやるから
あのさ ハチ
あの日から あたしが
何度 打ちのめされても 立ち上がれたのは
あんたがいつも見ていてくれたから
前回、「ナナだけが変わってしまった」って書いたけど、レンのセリフを読んで思い直した。
レンにとってナナはどんなときも大崎ナナであることに変わりはないけど、
なにかあったときにレンが守ろうとするのは自分じゃなくトラネスだろうと、ナナはわかっていた。
そのことがどうしようもなく寂しかったんだ。