Monologue of NANA

べつに眉をしかめられる程の厳粛な状況でも 深刻なニュースでもない
平和な朝に殴り込みのライブ映像と
やたら化粧の濃いボーカリストの醜聞

インパクトは充分

勝算はあると思った


MISATO

決まりそうなんですか?
デビュー


YASU

ああ
話題性だけで金になると踏んだんだろ

でも無理する事ねぇぞナナ
やる気になれなきゃ
契約書にサインしなきゃいいだけの事だ


NANA

何言ってんだよ!
やるしかねえだろ!

もう くだらねえプライドは捨てたよ
こうなったらとことん利用させてもらうぜ本城蓮!

あたしはどんな汚い手を使ってでもこの世界で
のし上がって誰もナメた口きけねえ位の大物になってやるって決めたんだ


MISATO

ナナさん ステキ!


YASU

そーいや ノブは?


MISATO

部屋で塞ぎ込んでいらっしゃるとか


NANA

おぼっちゃまは軟弱で困るよ


SHIN

てゆーか
ノブさんてなんか潔癖だよね
きっと世間の薄暗い道を通らずに
日当たりのいい場所で育ったんだね
だからあんな天然のあったかオーラも出せるんだろうけど


NOBU

おれはここんとこ
納得がいかねえ事ばっかりの人生だよ


YASU

だったらいいかげん気づいたろ
世の中 必ずしも正義が勝つようには出来てねえんだよ

負けたくねえんならしたたかになれ
もうちょっとずる賢くなれよ

それが嫌なら寺島旅館に帰れ


Monologue of NANA

テレビをつけたら午後のワイドショーで
レンが報道陣に囲まれていた
国際空港のロビーを無言で足早に歩くレンを見て
また少し置いてきぼりを食わされたような気分になった

あたしはレンがどこへ行こうとしているのか知らない
何を目指しているのかも知らない

いつかあの倉庫街でまた二人で暮らそうと話した事が
ボーカリストとして成功する事より
なんだかありえない夢物語みたいに思えて来た


TAKUMI

つーかおまえ
結局どーすんの?
子育ても実家でするの?


HACHI

それは嫌!
あたしは自分の家庭を持ちたいの!
何があろうとタクミと子供と3人で幸せを築いて行くって決めたんだから!


Monologue of NANA

ようやくあたし達の夢が叶う
だけど追い求めている理想と
押し寄せて来る現実は
いつも睨み合ってなかなか丸くは収まらない

どうやら人は何かを得る為には
何かを支払わされるシステムに組み込まれているようだ

薄々気づいてはいたけれど
満ち欠けのループは宿命だな


NANA

あんたには悪いけどさ
あたしの物語の中からやっぱりハチはどうしても消せないよ


NOBU

おれの物語からも全然消えてくれそうにねえんだけど
でもハチの物語の中から
おれはもう消えたんだろうな


HACHI

あたしね 淳ちゃん

あの満月の夜が
たぶん人生で一番幸せなひとときだったよ

欲しい物が全部手に入ったような気がして
夢と希望で胸がいっぱいになって
未来がキラキラ輝いて見えたの

あんな翳りのない幸せに満たされる事は
きっともう二度とないよ


Monologue of NANA

あたしの作戦は簡単だ
ハチにとことん甘い夢を見せてあげる事

ハチの物語の中で
あたし達ブラストがとびきりかっこ良く登場し続ければいいんだ
そしたらそのうち必ず戻って来るよ
シビアな現実をありのまま突きつけるあの冷酷な男に
甘ったれのハチを幸せに出来るわけがない

「ハチ物語」のヒーローはあたしだ


Monologue of NANA

あのさ ハチ

あたしは もう あんたの物語の
ヒーローにはなれないけど

今もあたしの物語の ヒロインの名前は奈々
とびきり かわいい あんただよ


Tweets

ハチ子はタクミを選んだけど、
人生で一番幸せなひとときだったと思う瞬間はノブに告白された満月の夜。
憧れだったお姫様の様な生活を手に入れても、
どんなにタクミに愛されて大切にされても、
あのキラキラした夜だけはこれからもハチ子の心に残り続けるんだと思う。
このハチ子の想いがあとからどういう風に繋がっていくことになるんだろう。