住民票は自分で取りに行くと言って
ナナは あたしの申し出をキッパリと断った
なんでもいいからナナの役に立ちたいのに
なんだか やっぱり片想いだ
出て行くのはやめたの?
出て行くわけないじゃない
タクミも反省してる事は言わなくても
ちゃんと分かってるから大丈夫だよ
だからあたしの気持ちも分かってね
あたしはシンちゃんのママ代わりだから
どうしてもお誕生日をお祝いしてあげたかったんだよ
おまえ そんなにシンがかわいいならなんとかしてやれよ
あいつ
レイラとデキてんだよ
デキてるって…
まさかレイラさんがシンちゃんのお客さんって事!?
そーは考えたくねぇんだけど…
レイラは結構マジに惚れてるみたいだし
分かった
あたしがなんとか説得してみるよ
でもおまえ この事は絶対内密にしろよ?
たぶん おれ以外誰も気づいてねぇから
大丈夫だよ!
あたしは絶対 誰にも話さないから
この件はあたしに任せてタクミは仕事に集中して
こーゆー時の為にあたしはタクミのそばにいるんだから!
そーなの?
おれの集中力を妨げる為にいるのかと思ってたよ
何か言った?
愛してるって言ったの
ヤバイ
ど真ん中に入っちゃった
昨日は本気でムカついてたけど
そこで終わりにしなくてよかった
タクミのイイとこもダメなとこも
ひとつ残らずあたしが受け止めてあげる
こんな愛しさが取り戻せてよかった
美雨
昨日はおれも一緒に帰りゃよかったな
寮に一人きりじゃ寂しかったろ
別に…
あたし一人でいる方が好きだし
実はおれもそーなんだけど
でもナナが嫁に行っちまって
隣の部屋がなんか急に静かでさ
一人でいるのと
一人になっちまうのは違うよな
ハチ子の親が何しに来るのー?
東京見物?
へー
しっかり親孝行しろよ?
いえ お母さん
タクミは猫かぶってるけど本当は暴君だし女たらしだし
そんな毎日毎日幸せってわけにはいかないのよ
でも昨日と今日は幸せ
明日は泣くかもしれないけど
明後日はきっとまた笑える
それでいいんだ
日々の暮らしってそういうものだよね
何があっても希望を捨てなければ
明日は来る
ねえ ナナ
希望を捨てなければ明日は来る
それはナナから学んだ事だったの
だけどあの日の雨だけは
今も止まずに頬を濡らすよ
どしゃ降りだったあの日の雨
さすがヤスは鋭い。
美雨の手首を一瞬見ただけで、あのパーティーの夜になにが起きたかを察した。
ヤスは人の感情のすべてに鋭いけど、特に孤独に対して鋭いんだと思う。
地元にいたときからレンやナナ、レイラの孤独に触れてきたんだから。
でもヤスはいつも人のこと優先で、自分の孤独をどうやって癒しているんだろう。