夜は魔物の時間だ。陽が落ちれば混沌がざわめき、シ界があふれて人々を脅かす。
しかし、デッド・デューンの夜は静寂が満ちる。死の砂漠では魔も眠りにつく。
壊れた世界の中でこの地だけが、静かな母胎のような暗がりをまとっているのだ。
穏やかな、母親に優しく抱かれて眠った遠い記憶を呼びさます夜---
思えば、両親を失ってから、私はそうした想い出を懸命に捨て去ってきた。
セラに対し、姉である以上に母のかわりを務められるように。
あの子から見れば、私はまるで口うるさい男親のようだったかもしれないが---