Report No.5

 コードネーム≪キミジマ・レポート≫ナンバー5
 発見場所:中央種子島高校・校門前

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 太陽活動の活発化が世界各地--- 主に低緯度地域--- でのオーロラ観測を可能にした時点で、多くの人はHAARPの事に言及するだろう。
 高周波活性オーロラ調査プログラム、それがHAARPだ。
 大出力の電磁波を電離層に照射して活性化させ、その挙動や無線通信等への影響を調査するプログラムだ。
 しかし、米軍が関与している紛れもない≪軍事プロジェクト≫である事が、HAARPへの疑念を払えないでいる重大な原因となっている。
 これまで、世界中でうんざりする程のバカげた--- あるいは偶然にも確信に迫りかけたHAARPに関する考えが、陰謀論者達によって語られてきた。

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 例えば、1兆ワットにも及ぶ超強力な電磁波を照射する事で気象操作、大規模マインドコントロール、人為的な地震発生に用いるといった説。
 例えば、電離層に干渉する事で強力なレーザー兵器を生成して各都市を攻撃するといった説。
 あまりにも想像力の逞しすぎるそれら無数のバカげた説が、元々存在していた≪真実を突いた重大なただ1つの警鐘≫を覆い隠して、
 全ての説をひとまとめにして、「何を下らない事を言っているのか」と人々の苦笑を誘う結果をもたらしてしまっている。
 だが惑わされてはならない。
 巧妙な目眩ましとして用いられるバカげた諸説の出所は、いずれもタヴィストックである可能性が高い。
 木を隠す為に森を作ってしまう。
 それがタヴィストック研究所のやり方であり、プロパガンダの常套手段だ。
 そもそもHAARPの強力過ぎる電磁波は、地球に向ける為のものでは無い事は、電離層への照射という表向きの目的を見ても明らかだろう。
 だが、それが全てでは無い。
 ユリシーズ計画での探査結果がNASA、及び300人委員会にもたらされた時点で、HAARPはその性質を転換させられた。
 プロジェクト・アトゥムに組み込まれた、と言えば分かり易いだろう。

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 太陽は表面温度がおよそ6000度であるが、太陽コロナは実に数百万度までに加熱された状態で、太陽表面から太陽磁気圏へと放射される。
 その加熱の原理は、2007年頃になって磁気再結合現象である事が突き止められた。
 すなわち、太陽の近接するN極とS極の影響で、太陽の表面と上空のコロナとでは反対方向の磁力線が接触しており、非常に不安定な状態となっている。
 双方の磁力線はそれぞれに繋ぎ変わって短くなろうとする傾向があるが、この時、巨大なエネルギーが解放され、数万度に加熱されるのだ。
 太陽表面だけでなく、太陽磁気圏ではこの磁気再結合は頻繁に発生している。
 特に活動極大期が終息する2020年までは、磁気再結合による宇宙空間での爆発現象は多発するだろう。
 そしてそれは、対岸の火事では無い。

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 太陽磁気圏と地球磁気圏は密接に関係している。
 太陽磁気圏での磁気再結合は地球磁気圏にまで多大な影響を及ぼす。
 太陽嵐は、太陽の大気とプラズマを超高速のジェット噴流として地球磁気圏まで運んでくる役割を担う。
 そのプラズマと地球磁気圏とが衝突すれば、磁気再結合現象が発生する事も有り得るのだ。
 オーロラの発生も、このプラズマの加熱、加速によるエネルギーで生まれるものだという事を認識しておかなければならない。
 もしもこの地球磁気圏での磁気再結合、すなわち磁気圏サブストームが起きれば、地球上には通常の太陽嵐到達等よりもずっとクリティカルな、
 全人類を滅亡に追いやるには充分な規模の被害が出るだろう。

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 プロジェクト・アトゥムは、それを人工的に起こそうとする恐るべき計画であり、HAARPはその歯車の1つでしかない。
 巨大過ぎる太陽は人類の手に余り制御不能だが、地球磁気圏ならば制御は可能である。
 少なくとも300人委員会は、そう考えている。