Report No.6

 コードネーム≪キミジマ・レポート≫ナンバー6
 発見場所:雄龍雌龍の岩

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 メディアを使って虚構を現実のように喧伝するという手法は既に時代遅れとなった。
 21世紀におけるプロパガンダは、空想を現実へと拡張する事で人々の心に強くその風景を刻み込む事だ。
 巧妙に、深く静かに、現実への認識を崩壊させるのだ。
 それを彼ら300人委員会は≪沈黙の兵器≫と呼ぶ。

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 20年もしないうちにミサイルを撃ったり戦車を走らせたりという戦争のあり方は終わるだろう。
 核はただの骨董品となる。
 戦争は誰も気付かない所で密やかに始まり、ほぼ一方的な虐殺が誰も知らない所で行われ、誰にも知らされないまま終わるのだ。
 人の心へ静かに浸食し、犯し、蹂躙し、やがて殺していく。
 それこそが≪沈黙の兵器≫のあり方であり、人の意志はより直接的にコントロールできる所まで来ている。
 それはプロパガンダの域をはるかに凌駕し、人の尊厳すらも容易に奪う恐るべき存在である。

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 ありもしない架空のものを人の目に映し出す事は科学的に可能だ。
 アメリカのヴィクトル・コンドリア大学はVR(ヴィジュアル・リビルディング)と呼ばれる技術を既に開発し、特許技術として正式に認められている。
 人の脳は神経パルス、すなわち電気信号によってその意志が形作られている。
 故に人工の神経パルスを視神経から脳へと干渉させれば、妄想もまた現実へと拡張させる事が出来る。
 これはARをさらに進化させた技術であり、人間の生活レベルを劇的に変化させるガジェットとなり得るが、
 それはあくまでも平和利用されればの話であり、既にその望みは絶たれたと言っていい。

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 VR技術を応用して大量の人間に一斉に幻覚を見せる事で意志をコントロールする所まで既に研究は進んでおり、
 もちろんそれを主導しているのはタヴィストック研究所に他ならない。
 300人委員会の人類牧場計画承認86号プロジェクト・ノアがそれであり、
 タヴィストックによる技術供与を得て日本の希テクノロジー社が東京・渋谷にて無差別大規模人体実験を実行に移した。
 それだけではない。
 電磁波兵器による人為的な地震すらもあの町では起こされていることは、周知の事実だ。
 あれほどに不自然極まりない地震にもかかわらず、それについて疑問を呈する人間は誰ひとりとして存在しない。
 それを不思議に思った事はないか?
 ないならば、あなたもタヴィストックによって意志をコントロールされている。

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 主体性を失った集団の意志、地震すら起こせる強大な電磁波兵器、そして極大活動期における太陽嵐。
 全ての条件が揃った時、世界に終末のラッパが鳴り響くだろう。
 ごく少数の権力者達が、何の罪もない人々を徹底的に虐殺し、一部を家畜とする為に、プロジェクト・アトゥムは開始される。
 その機会は2015年、2019年、2020年の3度、訪れるはずだ。
 警戒せよ。
 既に、手遅れなのかもしれないが。

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 10/3/29
 ここまで読み進めて来てくれた事に感謝する。
 おそらくこの私信を読んでいるあなたは余程辛抱強いか、余程知的好奇心が旺盛か、余程正義の心を持ち合わせているかの、いずれかだろう。
 だが注意して欲しい。
 もしこれを読んでいる事を彼らに悟られればあなたの命も無いという事を。
 一連のレポートは300人委員会の刺客から隠れながら書いた告発文である。
 あなたがこれを読んでいる時点で私は既にこの世にいないはずだ。
 だがなんとしても、この恐るべき陰謀は食い止めなければならない。
 その上で、頼みがある。
 あなたが私を信用してくれるならば、7つ目のレポートを見つけてもらいたい。
 7つ目のレポートはそれ自体がキーとなっており、それが開放されると、ここまで6つのレポートが≪居ル夫。≫を使って世界中へと拡散されるよう設定してある。
 もちろん拡散元については決して辿られないようにしてある。
 このレポートを書いている2010年時点で、≪居ル夫。≫はまだプロトタイプに過ぎない。
 だが5年後、あるいは9年後、10年後には世界中の人が使ってくれていると信じ、こうして頼んでいる。
 このレポートをあなたが見ている時点で、私のその願望にも近い予想は当たった、と前向きに考えておこう。
 これはタヴィストックの手法を逆手に取った、逆プロパガンダだ。
 21世紀の高速情報化社会においては情報の拡散は一瞬で行われ、一度広まればそれを止める手段は無い。
 タヴィストックのように、木を隠す為に森を作るような真似をしない限りはだ。
 さあ、選択してくれ。
 全てはあなたの手に委ねる。
 ここまでの告発を真実だと感じたなら、7つ目のレポートを手に入れるんだ。
 信じられないと思うなら、今すぐ破棄してくれて構わない。
 ここまで読んでくれる人が未来に現れる事を祈る。
 読んでくれた人には感謝を。
 ありがとう。
 あなたの生きる時代においてまだ陰謀が為されていない事を願っている。
 愛理によろしく。