【死せる守護者の助言】
「混沌の心臓」は誓約者に力を与えるのではない。誓約者の身体を喰らうのだ。
カイアスが得たのは不死身の身体ではなく、「永遠の生」という呪いである。
ノエルよ--- 誓約者たるカイアスから「心臓」の力を奪えるのは、最後の守護者たる汝だけだ。
汝がカイアスを殺した時、同じ呪いを受けるか、彼を呪いから解き放てるか。
それは守護者としての汝の器にかかっている。
【死せる守護者の助言】
カイアスのあやつる大剣には、黒きバハムートを召喚する秘石が埋め込まれている。
バハムートはヴァルハラの召喚獣だ。混沌の女神エトロが、ルシに授ける賜物とされる。
カイアスがなぜルシの秘石を持つのか、知る者はない。
彼が誓約者になったのは数百年---
いや1000年以上の昔であり、当時を知る者は誰ひとり永らえていないのだ。
【死せる守護者の助言】
かつてグラン=パルスで、おおきないくさがあった。幾千もの軍勢がパドラを襲い、巫女の命を狙った。
その時カイアスは「絶対召喚」を用いた。
召喚獣バハムートと一体化し、すべての潜在力を引き出す術だ。
絶対召喚は、代償として術者の生命力を燃やしつくす。
カイアスの命はつきた。だが不滅の心臓を得て、彼はよみがえった。
今やカイアスは、幾度でもこの畏るべき召喚術を用いることができる---
「混沌の心臓」の力がつきるまで。
【石碑の記憶】
ヴァルハラは、すべての時代とつながった世界である。
時詠みの巫女が時を視る時、その心はヴァルハラにある。
それゆえ巫女はヴァルハラを通じて、みずからの心の声を望む時代に届けることができる。
だがその声を聞くことができる者は、決して多くない。
巫女の声に耳を傾けられるのは、心に深き混沌を宿す者だけである。
【石碑の記憶】
ヴァルハラの中心に、女神エトロの神殿がある。
だがエトロ自身の御座とされる「女神の玉座」は、常に空位である。
神殿がいつ建設されたのかという問いに、答えはない。
時のないヴァルハラでは「いつ」という疑問は意味をなさないからである。
一説によると、神殿は何者かを封じるために、女神自身の手で創られた牢獄だという。
【石碑の記憶】
時詠みの巫女は、自分の死の瞬間を知ることがある。
だが巫女は、自身を守るために時を変えることを許されない。
巫女はさだめられた死を従容として受け入れねばならない。それが時詠みの掟である。
時を変えることで誰かが犠牲になり、何が失われるか---
時詠みといえども、あらかじめその結果を知ることはできないからである。
【石碑の記憶】
女神の神殿があるヴァルハラは、あらゆるものが移ろいゆく混沌の海に漂う。
混沌に底はなく、ひとたびその波間に呑まれた者は、生と死の狭間を永遠に漂い続ける。
混沌の海には、「時の台座」が沈んでいるという。
それは不可視世界に女神エトロが最初に足を踏み入れた時、最初の足がかりとした聖なる場所である。
しかし女神が力を失うとともに、いずこかへ没したとされる。
【石碑の記憶】
時詠みの巫女は多くの予言を残しているが、中でも最も謎めいた予言が次のものである---
「ヴァルハラが空を喰い破る時、輝ける名の星が現れ、天にきらめく希望となる」
「空を喰い破る」とはどのようなことか。「輝ける名の星」とはなんのことなのか。
予言は救いを意味するのか、それとも破滅の警告か--- あらゆることが謎につつまれている。
【ユールの告白】
エトロは惜しみなく与えた。
不可視の世界から門を開き、人に力を授けるたびに、みずからの力を失っていった。
女神は混沌の中でまどろんでいる。
その存在が完全な無となる時、人に力を与え、世界を支えるものはいなくなる。
「時」は、女神を継ぐものを必要としている---
【ユールの告白】
コクーンの民がグラン=パルスに降りた時、大いなる魔法が地に満ちた。
人々の中に、魔力に目覚める者が現れた。
わたしは知っている。それは時の歪みのあらわれだと。
時が変わり歴史が壊された時、心と物質の領域をわける境界にほころびができた。
かつては選ばれしルシだけに許されたクリスタルの力を、ルシならぬ人々も引き出せるようになった---
それが地に満ちる魔法の真実。
【ユールの告白】
人が「心」と呼ぶもの、それは女神に授かりし混沌。
人はみな、ヴァルハラの混沌を抱えて生きている。
ヴァルハラからは、すべての時代を見透すことができる。
わたしが時を視るのは、「心」というヴァルハラを持つがゆえ。「エトロの瞳」は特別な力ではない。
誰でも、未来を視る時がある--- 心を持たぬ人は、いないから。
【ユールの告白】
人の身体は、女神の流した血から創られた。女神エトロに贈られた混沌が、人の「心」となった。
内に大いなる混沌を抱えるいと古き民、それが時詠みの一族。
最も古き一族の巫女、それがわたし。
時を視る力。時を超える力。魔物を導く力。時が変わっても、夢に記憶をとどめる力---
心の形によって、秘めたる混沌の大きさによって、力のあらわれは異なっている。
それらすべてが、女神の祝福。
【ユールの告白】
有限の世界にありて、永遠なる「混沌」に焦がれるもの。
偉大なる神々の意思にして、すべての生あるものを生み出す力。それがクリスタル。
クリスタルが夢見る永遠、それは不可視の世界にある。
ゆえに神々は、不可視の門を希求する。
あらゆるクリスタルの中で最も輝かしきもの--- ブーニベルゼの名において。