【異なる歴史の断章】
「質問。アカデミーは結局、自分の手でアトラスを造ったってことなのか?」
「そうみたいだね」入手したばかりのデータを手に、セラが答える。
「古いコクーンの再建をめざす勢力が、コクーンのファルシを再生させたのがきっかけだって」
「つまりアトラスは、ファルシから人間を守るために造られた兵器だったってことか?」
「うん---」セラが黙り込んだ。ノエルも空を見上げ、しばし黙考する。
アトラスを造らなければ、敵は次々にファルシを復活させていったはずだ。
巨兵でファルシに対抗する他に、アカデミーの連中にできることがあっただろうか---?
【異なる歴史の断章】
はるかな昔、コクーンとパルスの間で大戦があった。
ヴァニラとファングというふたりの娘が魔獣を解き放ち、コクーンに迫った。
その時、女神が大いなるわざを起こし、ふたりはクリスタル像となって長い眠りについた。
ふたりのクリスタルはヲルバ郷の神殿に移された。
その後、神殿はコクーンに引き揚げられた。
数百年の後、神殿に迷い込み、ルシにされたコクーンの少女がいた。
--- 少女の名は、セラといった。
パージへとつながる13日の物語は、そこから始まった。
【異なる歴史の断章】
はじまりは、1匹のプリンとの出会いだった。プリンの言葉を、モーグリが人の言葉に通訳する。
それは驚くべき内容だった。「真・完熟大王が誕生するクポ!」
「それって俺たちが、歴史を変えるのに失敗したせいか?」ノエルの言葉に、モーグリがうなずく。
あの完熟大王をも超える史上最強のプリンに、どう立ち向かえというのか---?
セラとノエルの表情に影がさしたその時、モーグリがつつと進み出て言った。
「モグに名案があるクポ!」
自信満々のモーグリとは裏腹に、ふたりはますます不安げな表情で顔を見合わせた---
【異なる歴史の断章】
「行くぞ!」号令とともに、数名の男たちがエレベータに突入する。
ここは情報拠点アガスティアタワー。彼らは「レジスタンス」だった。
AF400年、シ骸事件をきっかけに、アカデミアに機械の暴君デミ・ファルシ=アダムが君臨した。
アダムは新たな戦闘用ファルシを量産し、人類を完全に制圧した。
人間たちの反抗も始まっていた。
塔に侵入した男たちの任務は、クリスタルを奪取しファルシ製造を阻止すること。
一方、幽閉されたセラとノエルの中でも、何かが変化しつつあった---
【異なる歴史の断章】
時空の交叉路を進んでいたスノウは、ふと目の前のゲートに映った映像に目を留めた。
「あれは--- セラじゃねえか」
映像の中では、セラがひとりの女性からオーパーツを受け取ろうとしていた。
少し迷っているようにみえた。
場面はそこで変わり、ゲートは万華鏡のように次々に新たな映像を映し出していった。
見たこともない歴史の断片の数々。
「誰かが歴史を書きかえてやがる!」
事態の急変に気づいたスノウはシヴァを駆り、ゲートへと向かった。
13のクリスタルをめぐる、新しい物語が始まろうとしていた。
【異なる歴史の断章】
ユールは気づいていた。ここはわたしが望んだ世界。
ノエルがいて、わたしがいる、それがすべて。他には何も望まない。
カイアスが出ていって、ノエルとふたりだけになって。そこからやり直せたらいい、そう思っていた。
でもノエルは違った。ノエルは「未来」を望んでいた。
いいこともいやなことも、いい人も悪い人も、それらすべてが存在する未来を。
ユールは顔を上げた。彼が願うなら、わたしは新たなる未来を望む。
流れ星の先にある新しい扉を--- 本当の未来を。
【異なる歴史の断章】
ノエルの脳裡に、カイアスの記憶のひとつがよみがえった。
1000年以上も昔、カイアスを打ち負かす寸前まで追いつめた戦士がいた。
だが彼は天運に恵まれず、ヴァルハラに召された。
彼ならば、カイアスを「永遠」という呪いから救えたかもしれない。
だがその望みはかなわず、カイアスはノエルの誕生を待たねばならなかった。
そのノエルもまた、期待には応えられなかった---
「勝手な話だよな」ノエルが眼を開いた。
「俺は俺のやり方で救ってやる。ユールも、セラも、カイアスもな」
その表情には、いつもの前向きな笑みがよみがえっていた。
【異なる歴史の断章】
「ね、モーグリってしゃべれるの?」突然の質問を発したのは、ノラハウスに遊びに来たドッジ君だった。
私は答える。「もちろんだよ。いろんなことを知ってて、質問すると自慢そうに教えてくれるんだよ!」
「へえ、よく知ってんだな、モーグリのこと」サッズさんが笑いながら茶々を入れる。
言われてみてはっとした--- 私、変だ。
モーグリは絵本の中の動物なのに、まるでどこかで会ったことがあるみたいに答えたりして。
「どうしたの?」無邪気に見上げるドッジ君に、なんでもないよ、と答えた。
でもその日は1日中、モーグリのことが頭を離れなかった---