聖府はノーチラスで捕らえたルシを首都エデンに移送し、大衆の目の前で公開処刑しようとしていた。
騎兵隊を率いるレインズ准将は、聖府をあやつるファルシの真意を推測する。
市民が恐れる下界のルシを処刑して、コクーン社会に広がる不安を解消し、
ファルシによる支配体制を盤石のものとする--- それがファルシの計画ではないだろうか。
仲間の生命をファルシの思惑に利用されるわけにはいかない。
救出を決意したライトニングたちは、ルシを護送する聖府艦隊の旗艦パラメキアへ潜入を試みる。
パラメキアには聖府のダイスリー代表も座乗している。
敵が罠を張っているのは明白だが、危険は承知の上だった。
下界のルシを処刑場へと運ぶ聖府艦隊の旗艦パラメキアが、
ライトニングたちの潜入をたやすく許したのは、やはり罠だったようだ。
レインズ准将が率いる騎兵隊の協力を得てパラメキアに降り立ったとたん、PSICOMの兵士たちが迎撃に現れる。
それでもルシたちはひるまない。
目的は仲間の救出だけではない。彼らにとっては世界を変える戦いでもあるのだ。
パラメキアでは聖府のダイスリー代表が陣頭指揮をとっている。
ダイスリーを捕らえてファルシの陰謀を証言させれば、
聖府によるコクーン支配を覆すだけでなく、人々の気持ちを動かせるかもしれない。
聖府の情報操作に騙されて、ひたすら下界を憎んでいる大衆が考えを変えてくれれば、
下界のルシであるライトニングたちも、今後コクーン社会で暮らしてゆける可能性---
希望が生まれるのだ。
息子ドッジがクリスタルに変わった絶望に打ちのめされ、死を望んだにもかかわらず、サッズは生きている。
ナバート中佐によって拘束された彼らは、首都エデンへ運ばれて処刑される運命にあった。
彼らは殺されるために生かされていた。
ヴァニラのせいでドッジがルシにされたと知った時、
彼女を罵ったサッズだったが、今は冷静に話を聞けた。
かつてコクーンと戦うルシだったヴァニラは、クリスタルになって眠っていた。
数百年の眠りから覚めた時、再びコクーンと戦うことを恐れた彼女は、
記憶を失っていたファングに真相を隠し、現実から逃げていたのだという。
その告白はサッズにささやかな希望を与えた---
いつかドッジも同様にクリスタルからよみがえるかもしれない。
彼らは兵士の隙をついて逃亡を始める。
それは現実からの逃避ではなく、生きるための前向きな逃走だ。
一方ライトニングたちも仲間の救出をめざし、続々と現れる敵兵を突破して前進している。
ナバート中佐は動揺している。
あらゆるケースを想定して多様な迎撃作戦を立てていたのに、
ルシたちは何もかも蹴散らして進み、しかも飛空艇の動力機関が突然に停止してしまったのだ。
機関停止を引き起こした力の正体に、彼女はまだ気づいていない。
一方ルシたちは幾度となく幸運に恵まれている。
サッズのヴァニラは拘束から脱走してすぐ武装を奪還できた。
ライトニングたちは障害を越えるルートを次々と発見し、行く手を阻んでいた強風も艦の停止で消え失せる。
運命に導かれるように再会を果たして、彼らは勢いづいていた---
自分たちには奇跡を起こす力がある、と。
迷いは消えた。
自分たちなら聖府を倒し、ファルシによる支配をも覆して、コクーンを人間の手に取り戻せる。
そんな確信を抱いてライトニングたちは前進する。
パラメキアの艦橋にたどりつき、聖府のダイスリー代表に、奇跡の力を見せつけてやるのだ。
ファルシ=バルトアンデルス--- それが聖府代表の正体だった。
人間を道具のように見下すファルシの本性を現して、ナバート中佐ら部下を使い捨てるように殺戮したバルトアンデルスは、
ライトニングたちの攻撃をものともせずに嘲笑して真相を明かす。
ルシたちが下界のファルシから与えられた使命とは、魔獣ラグナロクに変身して、コクーンを崩壊へ導くことだという。
またセラがクリスタルになったのは、コクーンを滅ぼす道具を集めたから---
ルシにふさわしい者であるスノウたちを、下界のファルシへ導くという使命を達成したからだと。
コクーンを守ってほしいというセラの願いは、彼女と一同の使命にはなんの関係もなかったのか。
真実を突きつけられて愕然とするルシたちは、バルトアンデルスにうながされるまま、沈みゆくパラメキアを脱出する。
彼らを乗せた飛空艇は、見えざる力に守られるようにロッシュ中佐の猛攻を振り切り、
首都エデンの奥底に眠る「現実」へと堕ちていく---