郷は、あるべき姿に戻っていた。
かつてヲルバ郷を呑みこもうとしていたうつろな空間は、姿を消した。
後には、小規模な空間の亀裂が残された。
亀裂について、研究者の意見はわかれた。
ゲートの一種だという者もあれば、生成中の時空---
未完成の空間ではないかという説もとなえられた。
その空間は、セラとノエルのちいさな同行者にとってもまた、縁浅からぬ場所であった。
クリスタルが語る、時の記憶。
モーグリのふるさと探しが始まった。
きっかけは、どこで生まれたのか、自分でも知らないというモーグリの言葉だった。
モーグリは、「時の迷宮」になつかしい匂いをかぎとった。
セラとノエルは、迷宮をめぐれば手がかりが見つかるのでは、と考える。
おぼろげな記憶をつかまえようと、いつになく真剣な表情を見せるモーグリだった。