ヲルバ郷は、静かに終わりを迎えようとしていた。
そこに生ある者の姿はなく、すべてはクリスタルの砂に呑まれてゆく。
そしてこの時代にもまた、パラドクスが生んだ空間の亀裂がいくつも現れていた。
その光景を目にした時、モーグリの胸に、ふとなつかしい記憶がよみがえった。
クリスタルが語る、時の記憶。
時の迷宮をめぐり、モーグリの記憶をたどる旅を続けていたセラたち。
「時の海」と呼ばれる空間の先で、ついにモーグリの故郷が見つかった。
モーグリは幼い頃、時の波に流され、迷子になったのだった。
望めば、仲間が待つ場所に帰ることもできる---
だがモーグリの心に、迷いはなかった。
故郷は、想い出の中のもの。
モーグリにとっては、セラと旅する「今」が、何より大切なのだった。