コクーン破壊という使命を乗り越える希望を求めて、
グラン=パルスに降り立ったものの、ルシたちは空しい日々を過ごしていた。
幾日かけて探索しても、荒涼たる大地には人影ひとつなく、朽ち果てた廃墟をさまようのは魔物ばかりだ。
グラン=パルスの人類は、過酷な生存競争に敗れて死に絶えてしまったのだろうか?
コクーンのファルシが数千万人を殺して神を呼び戻そうとしているのは、
この荒れ果てた世界を再生するためなのだろうか?
成果がないまま時間だけが過ぎ、焦燥と絶望が彼らを緩やかに追いつめていく。
それは危険な兆候だった。
精神への打撃は、ルシの烙印を変容させる。
烙印の変化が最終段階にまで達したら、ルシはおぞましいシ骸と化す。
限界の時が近いことを、思い知らされる事件が起きた。
ホープの烙印に異変が生じたというのだ。
迷えるルシを殺して救う存在--- それが召喚獣だと聞かされていた。
だが苦悩するホープの前に、召喚獣アレキサンダーが現れた時、ライトニングの考えは変わった。
召喚獣が出現するのは、きっとルシのあやまちを止めたいからだ。
絶望や激情のあまり、失ってはならない思いを捨てかけたルシを、
厳しく戒めるために出現するのではないだろうか--- この試練を乗り越えて生きろ、と。
アレキサンダーとの戦いを通じて、見失いかけた生への意志を再び奮い起こしたホープは、北への旅立ちを決意する。
めざすは最果てのヲルバ郷。
ヴァニラとファングの故郷にたどりつけば、コクーンとグラン=パルスが争った数百年前の真実や、
ルシの宿命を打ち破る手がかりが見つかるかもしれない。
わずかな希望を求めて支えあい、彼らはグラン=パルスを北上する。
オーファンを倒してコクーンを破壊するという使命を果たさなければ、ライトニングたちはシ骸と化す。
しかしコクーンの崩壊は、数千万の死を招く。
そんな過酷な宿命を乗り越える手がかりを求め、彼らはヲルバ郷をめざしてグラン=パルスを北上している。
獣たちが駆ける果てしない荒野に、人間の姿はない。
かつて確かに存在していた文明が滅び去ったのは、コクーンとグラン=パルスが争った、
数百年前の黙示戦争が原因なのだろうか。
ヴァニラがずっと隠していた事実を、ファングはついに確かめた。
あの戦いの時、魔獣ラグナロクに変身してコクーンを攻撃したのはファングだった。
それを思い出せばファングが己を責めると思って、ヴァニラは事実を伏せていたのだ。
あくまで真実を拒もうとするヴァニラを戒めるように、召喚獣ヘカトンケイルが現れる。
どんなに残酷であろうとも、ルシたちは真実へと進まねばならない。
コクーン破壊という使命を恐れたヴァニラは、
記憶喪失のファングに真相を隠したが、それが逆にファングを焦らせた。
ヴァニラがシ骸になるのを防ぎたいファングは、使命の手がかりを求めるあまりに、
エウリーデ峡谷の事件を起こしてしまったのだ。
エウリーデでファングとはぐれ、さまようヴァニラはセラと出会う。
セラは初対面だと思っていたが、ヴァニラはセラを知っている。
偶然ボーダムの異跡にまぎれこんだセラは、使命を拒むヴァニラの身代わりのようにルシにされていた。
過酷な現実と自責に打ちのめされていたヴァニラは、セラの言葉に救われる。
現実がつらければ逃げてもいい。
時には逃げることがあっても、生きてさえいれば現実を乗り越えられる希望がある---
そんな言葉が、今日までヴァニラを支えてきたのだった。
改めてセラの思いを知り、誓いと希望とを新たにするスノウ。
義弟を見守るライトニングの胸には、もはやかつてのわだかまりはない。
ヴァニラとファングがおぼえていた故郷は、花と緑に彩られた美しい地だった。
けれども長い旅路の果てに眺めた故郷ヲルバ郷は、散華したクリスタルの粒子に覆われた砂漠へと一変していた。
求めていた希望が、夢幻のように消えてゆこうとしている。
オーファンを討ってコクーンを滅ぼし、数千万人の命を奪うという使命に背を向けてきたものの、
ルシたちの烙印は徐々に変容し、皆がシ骸に変わる時が近いことを示している。
打開策を求めてたどりついたヲルバ郷は、いまや虚無と死の世界だ。
それでも道は続いている。道の終わりにたどりつくまで、前へ進むと決めていた。
人を道具と見下すファルシは、人の心を揺さぶって操る。
セラの姿でライトニングたちを動揺させて、バルトアンデルスはコクーンに迫る破壊を予告した。
人形として復活させたレインズを、聖府の新たな代表に据えることで、
いまだ聖府打倒をめざしている騎兵隊の怒りを誘い、
さらには下界を恐れる大衆の心理を煽って、コクーン市民同士が殺しあう内戦を起こそうというのだ。
決起した騎兵隊は内戦の混乱をついて聖府首都エデンを攻め、オーファンを破壊するだろう---
それがコクーン崩壊につながるとも知らずに。
人間の手による滅亡を止めるには、ライトニングたちがコクーンへ戻るしかない。
だがそれこそ罠ではないか?
バルトアンデルスはコクーンへ帰ったルシたちの心をもてあそび、
ラグナロクとなってオーファンを討つしかない状況へ追い込む計画かもしれない。
コクーンへと帰還する飛空艇を残し、バルトアンデルスは姿を消した。
コクーンの命運を決する選択が、ルシたちの心に委ねられる。
ルシの宿命を打破するすべを求めて、数百年ぶりの帰郷を果たしたヴァニラとファングが目にしたものは、
砕け散ったクリスタルに埋もれて滅んだ故郷ヲルバ郷だった。
そしてライトニングらの故郷コクーンも破局を迎えつつある。
ファルシの策謀に踊らされた人々が、人間同士で殺しあおうとしているのだ。
迫り来る滅亡を止めねばならなかった。
たとえ自分たちを敵視する世界だろうと、コクーンは故郷だった。
ファルシの呪縛は解けていない。
コクーン破壊という使命を帯びた自分たちの帰還が、大いなる滅びを招くかもしれない。
それでも行くのだ。
人々の争いを止め、ファルシの思惑を乗り越えよう。
絶望の底で希望をつかみ、コクーンを守ろう。
この世界を見捨てた神への祈りではなく、誰かへの願いでもなく、自分自身の胸に誓って、
彼らは空へと舞い上がる---