たった今までレースの興奮に酔いしれていた首都エデンの繁栄が崩れていく。
ライトニングたちの帰還に呼応して現れたのは、巨大な兵器や魔獣の群れだ。
ファルシによってコクーン内に隠されていたアーク群の封印が解かれ、眠っていた下界の軍勢が放たれたのだ。
混乱に陥った聖府軍の隙をついて騎兵隊が動く。
ファルシと聖府の打倒を願うリグディ大尉は、聖府の新代表---
かつての上官であり同志だったレインズに銃口を向けた。
レインズは従容と滅びを受け入れる。
バルトアンデルスの駒として再生された彼だが、人として抱いた最後の意志は失われていなかった---
コクーンの未来を決めるのは人の心であり、ファルシの奴隷は消えねばならない。
だが騎兵隊は真実を知らない。
彼らはオーファンを倒してコクーンを救う計画だが、オーファンが滅べばコクーンもまた滅びるのだ。
自由を求める彼らの理想が、バルトアンデルスに利用されている。
首都中枢に向かう騎兵隊を、一刻も早く止めなければ。
封印されていたアーク群から解き放たれた下界の軍勢が、聖府首都エデンを踏みにじる。
しかしこれは惨劇の始まりにすぎない。
首都の異変がコクーン各地に伝えれば、これまで下界からの侵略を恐れてきた人々がパニックに陥る。
騒乱は暴動へと発展し、混乱の中で多くの命が奪われて、やがて血で血を洗う内戦が始まってしまう。
いや、内戦が起こる前にコクーンは滅ぶかもしれない。
ファルシ打倒を志す騎兵隊は、大いなる力の源泉とされるオーファンの破壊をめざしているが、
オーファンを倒すとコクーンが崩壊することは知らない。
ファルシに反逆する騎兵隊の闘志は、皮肉にもファルシの陰謀に利用されているのだ---
コクーンを滅ぼして数千万の命を捧げ、この世界に神を呼び戻すという、バルトアンデルスの計画に。
滅亡を止めねばならなかった。
ライトニングたちは先行する騎兵隊を追って、戦火に染まるエデンを駆ける。
滅びを願う人間などひとりもいない。
スノウたちルシも、ファルシ打倒をめざす騎兵隊も、そして下界を敵視する聖府の軍人たちも、
誰もがコクーンを守ろうと誓って戦っている。
同じ思いを共有しつつも敵味方に分かれてしまうのは、ファルシが対立を煽るせいだ。
ファルシにとって人間は使い捨ての道具---
そんな現実を悟っているからこそ、PSICOMのロッシュ中佐はルシとの戦いを選ぶ。
ファルシの魔力を得たルシなど、結局ファルシの手先であり人間の敵だ。
ロッシュはそう信じていた。
戦火で傷ついたコクーンに崩壊が迫っている。
騎兵隊によるオーファン破壊を止めなければ、バルトアンデルスの思惑どおりだが、
騎兵隊もロッシュ同様、信念に従って行動している。
説得が通じなければ戦うしかないのだろうか?
しかしあきらめてはならない。
駆けつけたノラの面々は、ルシであるスノウを受け入れてくれたのだ。
人間同士の争いに終止符を打つ、希望の光は消えてはいない。
強烈な閃光が消えた時、兵士たちはシ骸に変わり果てていた。
ファルシが用済みの人間を処分したのだ。
彼らはルシとしての使命すら与えられず、一瞬で魂を奪われた。
たったひとり生き残ったロッシュは、ファルシに従う聖府軍人たちの思いを代弁する。
たとえファルシの思惑に疑問を抱くことがあっても、ロッシュがもっとも守りたかったもの---
コクーン市民の平和と安寧は、ファルシなしでは成り立たない。
社会全体の安定を願うからこそ非情に徹し、パージやルシ狩りという蛮行に手を染めたのだ。
そのあやまちを悟っても、軍人としての生き方は変えられなかった。
残された道は、そんな生き方を終わらせることだけだった。
戦い抜いて力尽き、ロッシュは罪過を償うように散っていった。
人間同士の争いは終わろうとしている。
しかしコクーンの危機はまだ終わらない--- 破滅を望むバルトアンデルスを討つまでは。