少女は天性の女優だった。 客の胸の底を見抜き、本当に悲しみを必要とする者に涙をあたえた。 長すぎる生の果てに感情をすりへらしてしまい、泣けなくなった者たちのかわりに涙を流してみせた。 彼らが悲しみを取り戻し、同時に心から笑うことができるように。 少女が言うには、私には涙は必要ないのだそうだ。そのとおりだろう。私は悲しみを欲してはいない。 求めるのは、知らぬ間に私の中から失われていた想い--- ぽっかりと空いた虚ろを満たすために、私はそれを探しつづける---