混沌を宿す霊薬

錬金の求道者への協力は奇妙な体験になった。
ひとつ間違えば命にかかわりかねない研究途上の仙薬を、自分の身を実験台にして効能を確かめてほしいという依頼---
なぜそんな危険な頼みを引き受けたのか、いま考えてもまるで判然としない。
ひょっとすると、私は無意識にこの実験の結果がもたらしてくれる真理を予期していたのかもしれない。
人の魂が混沌より生まれいずるものであることを、私は完成した仙薬の並外れた効力を通じて理解できた。
だとしたら、間もなく世界を呑み込もうとする混沌とは、もはや誕生しない魂たちのうねりなのか---?