忘却の城
ジミニーメモをめぐる謎は、まだ解明されていない。
メモに「彼らの痛みをいやしに戻らなければならない」というメッセージを記したのは、いったい誰なのだろう?

謎を解くには「追加データ」を調べなければ。
それは元のジミニーメモには存在しなかった、隠されたデータ。
これまで解析不能だったがアクセスできるようになって、未知の世界が現れたという。
ミッキーはソラに調査を頼もうと考える。
だがデータが本来の状態に修復された時、ソラの記憶はリセットされていた。
ミッキーは再びデータ世界に入り、ソラを導こうとする。

ミッキーと出会った記憶をなくしているソラだったが、心のどこかになつかしさをおぼえ、ミッキーと一緒に行くことを決める。
ところがソラが未知の世界にたどりついた時、ミッキーの姿はなかった。
代わりに現れたのは、黒いコートの人物。
この「忘却の城」に真実が眠っていると語る彼は、ソラにカードを手渡して、城の奥へと進むようにうながした。
カードを使えば「幻」が出現するという。

ソラがカードを使ってみると、現れたのは故郷デスティニーアイランドの友達だった。
しかし彼らは現実の存在ではなく、ジミニーメモのデータから生み出された幻影だった。

そして彼らと別れたとたん、ソラは自分が誰と会ったか、思い出せなくなってしまう。
たとえ幻でも、友と出会った記憶をなくしてしまう... そんな体験がソラの心に「痛み」を刻みつけた。

ソラはさらにカードを使って、会った記憶のない人々と出会い、別れ、そして忘れていく。
そのたびに心に痛みが残ったが、ソラはその痛みをたいせつにしようと思った。
記憶が消えても、気持ちは残る。
そんな気持ちが、心の痛みになる。
そんな痛みがきっかけになって、いつの日か忘れてしまったことを、再び思い出せるかもしれないと考えたのだった。
ところが黒いコートの人物は、そんなソラをあざ笑った。
痛みはいやされることはなく、それどころかしだいにふくれあがって、やがてソラの心を闇に染めてしまうという。

思い出せない記憶は捨ててしまえと言い残し、黒いコートの人物は姿を消した。
とまどうソラに、ミッキーの声が届く。
ミッキーがソラに伝えようとしたのは、友達からのメッセージだった。
ドナルドとグーフィーがソラに呼びかける。
ソラには2人の記憶はなかったが、心にはあたたかい気持ちがわきあがった。
たとえ思い出せなくても、捨てることなどできない、かけがえのない想いだった。
ソラは決意した。今はたいせつな人たちの記憶を失っていても、思い出せる時が来ると信じて、心の痛みと向き合っていこう。
いつか記憶を取り戻すことができたら、心の痛みはきっと、いやされるだろう。
ソラの決意を試すかのように、黒いコートの人物が戦いを挑む。
戦ううちにソラは気づく。相手もまた痛みをかかえている。
ソラは相手の痛みを、自分のことのように感じた。

勝利したソラは、真相を知る。
黒いコートの人物は、データから生まれた幻。
ソラが痛みを受け入れられるか、確かめるために行動していたのだった。
その役目を終え、彼は静かに消えていった。
忘却の城の最奥で待っていたのは、ナミネと名乗る少女だった。
彼女と会った記憶のないソラだったが、知らないはずなのに、なつかしさをおぼえた。

ミッキーによると、かつてナミネはソラの記憶に触れたという。
彼女はその時、ソラの記憶の奥に眠っている隠された記憶を見つけた。
それはソラ本人の記憶ではなく、ソラとつながる他者の記憶だ。
いつの日か思い出さなければならない、重要な記憶... だがそれは強い痛みのかたまり。
その記憶に触れるには、痛みに負けない方法を見つける必要があった。
不用意に触れれば心が痛みに壊されてしまう。だからナミネはメモのデータに、痛みの記憶を書き加えた。
それがバグの原因であり、また「彼らの痛みをいやしに戻らなければならない」というメッセージが現れた理由だった。
データ世界での冒険を通して、記憶の痛みを受け止める決意をかためたソラは、隠された真実に触れる。
記憶の中に去来する、いくつもの姿。
それはソラが救わねばならない人々だった...

データ世界のソラと別れ、現実世界に帰ったミッキーは、ソラたちに手紙をつづる。
伝えなければならない真実があった。

新しい旅立ちの扉が、開かれようとしている。