忘却の城で記憶を失ったソラは、本来の記憶を取り戻すため眠りについたが、
彼が生まれてから過ごしてきた歳月の記憶をすべて回復するにはかなりの時間を要するものと思われた。
だが忘却の城はXIII機関が支配していた地だ。
より安全な場所でソラを保護せねばならない。
私はナミネを説得し、眠るソラをトワイライトタウンに移して守ることにした。
ナミネ。
以前も書いたが、彼女は極めて特異な存在だ。
ノーバディと同じ過程で生まれはしたものの、ノーバディとしての要素がほぼ欠落している。
彼女が絵を書きつづけているのは、自らに欠けたものを、他者の------主にソラの記憶から補うためかもしれぬ。
私はひとつの仮説に至った。
ナミネが特異なノーバディとして生まれたのは、かつてソラが自らの身にキーブレードをふるい、
ソラとカイリの"心"が同時に肉体を離れた時だと思われる。
ナミネは、カイリのノーバディとして生じた。
だがノーバディとして在るために用いた媒介は、ソラの肉体と魂だった------。
人が心を奪われる時、自我なきハートレスが生まれ、残された肉体と魂はノーバディを生む媒介となる。
だが自らの意思で心を肉体から解き放った者は?
ソラとゼアノートは、ハートレスと化しても自我を保っていた。
そしてカイリとナミネのケース。
カイリの心に闇が存在しなかったという例外と、カイリから離れた心が、ソラという器に移ったという例外------
理論上ありえない例外が重なったことが原因ではないだろうか。
ソラが眠っている間に、私は私の成すべきことをしよう。
リクという新たな協力者も現れた。
