さすがはキーブレードの勇者といったところか。
ソラたちはXIII機関の陰謀を退け、ナミネを救出した。
ナミネは他者の記憶を操る魔女であった。
その能力は、彼女が特殊な過程で生まれたことで得られたものであろう。
ナミネは、ある"少女"の心が肉体を離れた際に生まれたノーバディである。
だが彼女には対となるハートレスが存在しない。
それは"少女"がプリンセスだったからだ。
かつて私が治めていた世界"輝ける庭"の住人であった"カイリ"は、光の世界を支える7人のプリンセスのひとりであった。
心に闇を持たないカイリからは、ハートレスは発生せず、消え去るはずの肉体も、光の世界にとどまった。
つまりナミネというノーバディは、心を失った証であるハートレスも、ノーバディに新生する媒介となる肉体も欠落した、
極めて不安定な存在であり、それゆえにカイリとしての記憶もとどめていない。
肉体を離れたカイリの心が、闇に回帰せずに別の器------ソラの心の奥へ隠れたことも要因のひとつであろう。
すなわちナミネとは、ソラの心に直接干渉したカイリの分身であり、
だからこそソラや、ソラとつながる心を持つ者たちの記憶を操れたのではなかろうか。
彼女は真の意味で"存在しないもの"であり、ノーバディにすらなれずに行き場をなくした、もっともはかない影である。
