裏アンセムレポート5
あらゆる存在が分解されたこの世界で、私はただ考え、書きつづけることによって、からくも自我を保っている。

時間すらも意味を失った世界。
ここでは永遠と瞬間が同義だ。

急がねばならない。奴らはすでに行動を開始しているに違いない。

謎を解く鍵は"ハートレス"であろう。
6人の裏切者たちは、この呪わしい影どもをつくりだす研究を行っていた。

生命の心から"ピュアブラッド"のハートレスを生成するだけでなく、それらを利用して人工的にハートレスを合成していた。
しるしを与えられた人造ハートレスを、彼らは"エンブレム"と呼んでいたようだ。

しかしピュアブラッドにせよエンブレムにせよ、心を持たないハートレスは本能的な欲求にのみ従って行動する。
ただひたすら心を感知し、そして群がる。
人間程度の相手なら、簡単に心を奪い取り、自らに取り込んで仲間を増やすだけで、人間の命令など聞きはしない。

だが、より強いハートレスの命令ならば?

もし仮にあの男が自らの魂と肉体を捨ててハートレスとなれば、
本来統率できないはずのハートレスどもを統制できるのではないか?

さらに奴はハートレスの本能を利用する気ではないか?
心を求めるハートレスが、より大きくて強い心をめざすのであれば、その最終目的は明らかだ。
この世で最も大きな心------"世界の心"である。

何もかも仮説にすぎないが、奴はハートレスを使役して、世界の心に至る道を探しているのではないだろうか。