あの美しい楽園で過ごした日々は、もはや幻のように遠い。
無の世界へと追放されて、どれほどの時が過ぎたのか。
あらゆる存在が失われた無の世界で、私は怒りと憎しみを支えに、かろうじて自我を保っていた。
闇に魅入られた弟子たちへの憎しみと、彼らに裏切られた愚かな自分自身への怒りが私の心をぬりつぶしてゆく。
これが闇に心をむしばまれるということか。
いつまでも空しく時を過ごすわけにはいかない。
ゼアノートたちは何をめざしているのか?
あの男が記していた"アンセムレポート"の謎を解明して彼らを阻止し、倒さなければ。
それが私の使命------世界に償う、唯一の方法だ。
心なきもの"ハートレス"の存在が鍵であろう。
心の闇が具現化した姿。心を持たぬがゆえに、命ある万物から心を奪って増殖する呪われた影。
彼らはどこから来て、どこへ行くのか?
生命を構成する3要素------心、魂、肉体。
生命が心を失った時、残された魂と肉体は?
器である肉体に宿った魂が離れる時、生命は死を迎える。しかし心が離れる時はどこへ?
心が肉体を離れても、生命は滅びない。ただ心のみが闇へと消え去るだけだ。
時間がない。
いつまでもこの世界にとどまっていれば、私は身をもって答えを知るだろう。
私の心はすでに闇に囚われつつある。
